以前のニュースですが、
目に留まったので。
2015年に、
美術手帖を出版している、
美術出版社が、
民事再生で実質倒産し、
CCCがスポンサーになったニュース。
昨今あらゆる出版社が倒産しているわけですが、
この根底には何があるのでしょうか。
特に僕はアート関係の人間なので、
美術手帖をベースに論考していきます。
まず美術手帖の出版部数は60000部、
美術出版社の売上が12億円との事です。
まぁ12億円の売上がどの程度かというと、
大阪で言うと、
東大阪の小さな町工場でも、
それ位の売上はあるでしょう。
端的に、
収益を効率良く上げる企業としての価値、
それはほぼ無いと考える事ができます。
ではメディアとしての価値、
美術というニッチな業界ですので、
情報を集約し、編集し、発信する。
ここに美術手帖や美術出版社の、
「価値」があるのだと思います。
すなわち媒介する媒体としての価値です。
しかし、
IT革命以後のメディア環境の変貌で、
この媒体としての価値もほぼ無くなりました。
現代では昔でいう媒介する媒体を、
個人が担ってきています。
それはSNSなどの普及により、
個人から発せられる情報が、
大多数の人間に直接届ける事ができる、
そんな時代になったからです。
その様な中心的な役割を担う人間を、
インフルエンサーと呼んでいますが、
この個人が媒介する巨大なメディアは、
数万人から数十万人、
時には数百万人へ情報を届けます。
先ほど美術手帖の出版部数を60000部と紹介しましたが、
数字をみればわかる通り、
わざわざ美術手帖なんてメディアが必要無いのです。
ここから企業的価値もメディア的価値も無い事が、
一目瞭然です。
では美術手帖や美術出版社が唯一価値があるとしたら、
それは「権威」というものです。
これは悪しき風習の残りカスのようなものですが、
美術手帖や美術出版社というのは、
もう社会的価値の無い、
残りカスの様な存在なのです。
日本の美術業界全体がそうですが
、
最終的に権威というものにすがるしかありません。
具体的に、
美術手帖にピックアッップされたい人間が、
おそらく美術手帖の一番の読者層なのですね。
古い日本の画壇などでも、
権威者に認められるために、
その権威者なり、
師事している権威者の作品を購入するのです。
「権威」とは盲目的な信仰であり。
新興宗教と同じで、
その資本の流れは、
信徒がお布施するお金で、
その教団は成立しています。
美術手帖という雑誌が成立している構造は、
美術手帖へ掲載されたい、
またピックアップされたい人たち、
それが主な購読者であり、
閉じた系でお金が回っているに過ぎません。
もうこの辺でお気づきだと思いますが、
美術手帖、美術出版社の役目は終わったのです。
そして私の様な、
無名のアーティストが、
数千人、数万人へ向けて、
この様に、
自分の表現ができている。
その現実を理解してください。
もっとラディカルに申しますと。
現代は私の様な個人が、
昔でいう雑誌を発行している。
という事なのです。
「美学者母手帖」
発行部数10000部
美術作品、美術批評、あらゆる言説
美学者母