No.0026

「スマートアート宣言」(Smart Art declaration)

text : mama(美学者母)
2014年8月31日(
日曜日)執筆

 

「スマートアート宣言」(Smart Art declaration)

アートはテクノロジーに学ばなければならない。
The art must learn from the technology.

テクノロジーはその複雑性を排除し市民権を得たのだ。
The technology removed the complexity and obtained generality.

しかしアートはその複雑性を担保に、 未だに特権的な地位を確保し、
特権階級のものに留まっている。
これはアートにとって不幸な事であり、それに拘束されているのだ。
It is unhappy that the art still stay a special privilege position and remain within the thing of the privileged class by securing the complexity.

アートはテクノロジーに学ばなければならない。
The art must learn from the technology.

アートもその複雑性を排除しアートの確固たる市民権を獲得するのだ。
The art too removes the complexity,gets firm generality of the art.

アートの複雑性の排除とは、思考の帰結である。
It is the conclusion of the thought that the art excludes its complexity.

思考の帰結とはこの「スマートアート宣言」の概念である。
The conclusion of the thought is a concept of this “Smart Art declaration”.

スマートアートの概念では鑑賞者をユーザーと定義する。
In the concept of “Smart Art”,the appreciator is defined as a user.

それはアートは人の心に作用するデバイスだからだ。
It is because the art is a device acting on the heart of the person.

アートは様々なデバイスを使用する事を許している、
The art permits using the various devices.

しかしアートにとってその目的のありどころが重要なのだ。
However,it is important for the art to consider it as the purpose.

アートの目的は人間の心を豊かにする目的が最上位でなければならない。
The top of purpose of the art must be to be human being’s mind freedom.

それは、
It’s….

書く事を目的としない筆。
The brush which is not intended to write .

入れる事を目的としない器。
The bowl which is not intended to put .

着る事を目的としない服。
The clothe which is not intended to wear .

つまりまず人間の心をいかに豊かにできるのかが目的なのだ。
It’s the first purpose how human’s mind can be great.

目的のありどころが重要なのである。
That is,an above-mentioned purpose is important.

森羅万象のものがアートである事を否定しない。
This declaration doesn’t deny that all things in nature are the art.

アートが人間から乖離している事を否定する。
This declaration denies that the art separates from people.
アーティストは様々なデバイスから最善なデバイスを選択し、
よりスマートなユーザーインターフェイスを実現し、
最高のユーザーエクスペリエンスを実現しなくてはならない。
Artists must select the best devices from a variety of device,realize more stylish user interface and the best user experience.

そして、そのユーザーエクスペリエンスを実現すれば、
アートは確固たる市民権を獲得できるのだ。
And,if they realize the user experience, the art can get firm generality.

2014年9月1日 
美学者母
September 1, 2014 mama
翻訳:大和尚子 Translator Naoko Yamato

 





「スマートアート宣言」概要

まず「スマートアート宣言」の起点となった人物、
それは正しくアップル創業者スティーブ・ジョブズである。
彼はテクノロジーを使って、人々の心を豊かにした。
そればかりでなく、社会の在り方そのものを変えた。
まさに、パラダイムシフトを起こし革命者となったのだ。
この事は時代を変えた。
この先何百年経とうとこの革命は語り継がれていくだろう。
しかしアートもまた、
そのような時代を変革しパラダイムシフトを起こした時代があった。
それはアートがこの世界に生まれた時、 人間がアートを手に入れた時。
それは人間の思考がパラレルプロセシングを可能にした時である。
私は並列思考の獲得こそ人間がアートを手に入れた時だと考えている。
人間がパラレルプロセシングを獲得すると同時に革命が起こった。
それまでは全く進化していなかったあらゆる道具が進化をし始めたのだ。
その進化のスピードはそれまでの人類には考えられないスピードで進んだ。
それを可能にしたのが正に「心の豊さ」すなわち「アート」なのだ。
私たち人間はパラレルプロセシングを獲得し、
「心の豊さ」すなわち「アート」を生み出し、
様々なモノの複雑性を可能にし、組み合わせを考え、
「創造性」で革命を起こしたのだ。
これは現代のテクノロジーの起こした革命の遥か昔の話だ。
アートは複雑性を可能にすることでパラダイムシフトを起こしたのだ。
しかし、皮肉にも現代においてテクノロジーはその複雑性を捨て去る事で、
テクノロジーによる革命を起こし、パラダイムシフトを可能にした。
この事は何を意味しているのだろうか。
ある意味これは人間においての複雑性の臨界点に達しているのではないか。
テクノロジーにおいても、
その複雑性を理解できる者は極僅かな人間に限られるようになり、
またそれを扱える人間も極僅かな人間に限られた。
これは人間においての複雑性の臨界点、すなわち進化の停滞に他ならない。
人間の進化をさらに進めるにはどうするべきであるか、
その点において、
スティーブ・ジョブズはアートすなわち創造性を逆説的に応用したのだ。
複雑性を獲得した創造性を利用し、その複雑性を単純性により利用する。
これが、まさしくスティーブ・ジョブズが起こした革命の根本的原理なのだ。
そもそも、創造性とは複雑性を手に入れた根本的原理なのだ。
それを逆説的に単純性へ利用した、まさしくパラダイムシフトなのである。
具体的には、GUI(グラフィカルユーザインタフェース)やマウス、
スマートデバイスなどだ。 話をアートに向けてみよう、 アートもまた、
人間がパラレルプロセシングを獲得し心の豊かさを持ち創造性を駆使し、
複雑性の追求が加速し、いつしかその複雑性は極限状態に到達している。
その複雑性を理解できる者は極僅かな人間に限られるようになり、
またそれを扱える人間も極僅かな人間に限られている。
しかしアートはまだその複雑性の追求を辞めようとはしていない。
これはある種人間の進化の上では非常に不利益な事だと考えるのが自然だ。
人類全体の進化を考える上でとるべき方法論は一つしか無い。
アートの複雑性もテクノロジー同様に臨界点に達しているのである、
そしてアートもスティーブ・ジョブズが起こした革命同様に、
創造性を逆説的に応用し、複雑性を獲得した創造性を利用し、
その複雑性を単純性により利用する。
これが人類全体の進化を考える上でとるべき方法論だ、
この事がアートがさらに進化する上では避けては通れない道なのだ。
アートは複雑性の臨界点に既に到達している。
私たちアーティストはテクノロジーから学ぶべきだ。
その複雑性を極僅かな限られた人間の利益や幸福だけに利用するべきではない。 人類全体の進化、より多くの人間の利益や幸福の為に利用すべきなのだ。
それはアートにおいても、
テクノロジーでスティーブ・ジョブズが行った様に、
複雑性を単純性により利用するという革命を起こさなければならない。
しかしアートにおいて、スティーブ・ジョブズなどよりももっと早く、
そのような事に挑戦したアーティストは数多くいる。
その中でもマルセル・デュシャンは名前を挙げておきたい。
マルセル・デュシャンは最も尊敬すべきアーティストの内の一人だ。
しかし彼の革命は上手くいかなかったのだ。
複雑性を単純性により利用するという挑戦を試みた、
しかし、逆にアートはより難解であると受け取られ、
より複雑性を増す事になった。
この失敗は今回の「スマートアート宣言」に活かさなければならない。
その教訓を生かしたいと思い「スマートアート宣言」に記述した文面がこれだ。 「アーティストは様々なデバイスから最善なデバイスを選択し、
よりスマートなユーザーインターフェイスを実現し、
最高のユーザーエクスペリエンスを実現しなくてはならない。
そして、そのユーザーエクスペリエンスを実現すれば、
アートは確固たる市民権を獲得できるのだ。」
マルセル・デュシャンは、
最善なデバイスを選択しスマートなユーザーインターフェイスを実現した。
しかし、最後に一番大切なものを実現できなかったのだ。
それがユーザーエクスペリエンスである。
私は確信した、アートが進化する唯一の方法を。
ユーザーエクスペリエンスの追求にこそアートの未来があるのである。


2014年9月1日 美学者母